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家族信託で二次受託者になってくれる人がいない場合の対応
コラム
家族信託では、一般的に、受託者に万が一のことがあった際に受託者の業務を引き継ぐ二次受託者(後継受託者)を決めておきます。
しかし、家族構成によっては、二次受託者になってくれる方が見つからないケースも多々あります。その場合にどのような対応をするケースが多いかご紹介します。
そうなったらもう信託を終了させる
受託者になるのは子ども世代がほとんどですから、基本的には委託者兼受益者である親より先に受託者に万が一のことが起こる可能性は極めて低いと言えます。なので、そうなってしまったらもう信託どころではなく、信託を終了させて行政あるいは法定後見(成年後見)制度に任せるという選択肢もあります。
高齢の親御さんの財産は「親のために使う家族の財産」という認識が強い日本の家庭では、選択できる管理・運用方法に柔軟性がなかったり、専門職や家裁に監督されたりする法定後見制度は受け入れられない方も多く、それが現在の家族信託ニーズにつながっています。
しかし、法定後見制度を使っても委託者がひどい目に合うわけではありません。きちんとご本人の財産を守り、必要な支出はして生活を守れる制度ではあります。
遺言性の高い信託の場合は注意
ただし、例えば親世代が亡くなったあとに受益権が子ども世代に移って信託を継続するような設計(受益者連続型信託)のケースなど、単なる認知症対策以上の効果を持たせる信託の場合は、信託を終了させてしまうとそちらもダメになってしまいますから、注意が必要です。
例えば、親の財産を子Aに託し、親が亡くなったあとは受益者を子Aと重度の知的障害のある子Bに移して信託を継続するようなケースであれば、親が亡くなったあとの子Bの生活保障の思いが詰まった信託の設計になっているでしょうから、終了させてしまうのはマズイでしょう。
商事信託を使う
信託会社などの免許をもった事業者が受託者になる信託を商事信託と言います。
特に、司法書士が中心となって作った信託会社「ふくし信託株式会社」は、家族信託ではカバーしきれない部分をカバーする役割を打ち出しており、家族信託の二次受託者にもなってくれます。万が一の際には、このような事業者にお願いするのも一つの手でしょう。
もちろん、信託会社にお願いするわけですから費用がかかります。信託契約の中に二次受託者として名前を入れる時点で、金銭のみ信託の場合は20万円、不動産が入ると30万円とのことでした。実際に二次受託者に就任する場合には、当然追加費用がかかります。
商事信託を選ばずに諦めることを選んだケース
そうはいっても、商事信託に頼むまでもないと判断されるケースもあります。
お母さんと娘さん、息子さんという家族で、お母さんの財産を娘さんに信託するケースがありました。
お母さんが亡くなったら信託終了。息子さんは疎遠になっているため、信託終了後は実際に面倒を見てくれている娘さんに残った財産をすべて渡したいとのお母さんのご意向です。
このような事情なので、娘さんに万が一のことがあった場合に二次受託者になってくれる候補者はいません。
しかし、このケースでは、二次受託者を準備することなく、万が一の際には諦めて法定後見に任せるという決断をされました。安くない費用をかけて商事信託で二次受託者を準備するメリット、お母さんより先に娘さんに大事が起こるリスク、それでも信託を継続する必要性、などを考慮した結果となります。
残った唯一の相続人である息子さんに財産をあげたくないわけではないので、本件は遺言の代用としての機能もそれほど重要ではありません。