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アルツハイマー病の診断・予防の進化〜血液検査で変わる認知症対策の最前線〜
コラム
「アルツハイマー病」と「認知症」の違いをご存知でしょうか?
認知症を発症する要因には様々な病気があり、アルツハイマー病はその一種、という位置付けです。
実は、認知症患者の約6割がアルツハイマー病を原因とするものと言われています。
日本では65歳以上の6人に1人が認知症と推計されており、高齢化が進む中で大きな社会問題となっています。
そんな中、今年5月、アメリカでアルツハイマー病の診断に使える血液検査が初めて承認されました。
これまでは腰椎穿刺やPET検査といった高額で身体への負担も大きい検査が主流でしたが、血液検査の登場で手軽に早期発見ができる時代が到来しつつあります。
診断精度は従来の検査と同等以上とも言われており、今後は日本でも普及が期待されています。
アルツハイマー病は、脳内でアミロイドβやタウといった異常タンパク質が30年も前から少しずつ蓄積していくことで発症します。
この蓄積を除去する脳の「掃除機能」は深い睡眠時に活発に働くとされ、睡眠不足が発症リスクを高めることもわかってきました。
つまり、若い世代でも30代、40代からすでに脳内で異常が進んでいる可能性があり、予防意識が重要です。
血液検査では「PTAU217」と呼ばれる物質などを調べることで、異常タンパク質の蓄積を把握できるそうです。
最近では、検査結果をもとに生活習慣の改善を指導し、リスクを下げる取り組みも進んでいます。
ワクチンの研究開発も進んでおり、将来的には「予防接種で認知症を防ぐ」時代がやってくるかもしれません。
ただし、検査の普及には課題もあります。
がん検査のように「血液や尿だけでわかる」と誤解されて不要な不安を煽られないよう、正しい知識が必要です。
また、認知症にはアルツハイマー型以外にも、TDP-43が原因の「LATE」やレビー小体型などさまざまなタイプがあり、原因物質によって対応方法も異なります。
今後は血液検査でこうしたタイプの判別が進むと考えられ、5〜10年のうちに診断と予防のスタイルが大きく変わると予想されています。
一方で、認知症を抱える家族を介護する人の負担も深刻です。
実際に仕事を辞めざるを得ない方も多く、介護は家族だけの問題ではなく社会全体で支えるべき課題です。
病気になってから治すよりも、予防の方が効率的で負担が少ないのは言うまでもありません。
火事が起きてから消火するより、火災報知器や防火対策を整える方が安心なのと同じです。
これからの時代は、「認知症は早期発見と予防が鍵」と心に留めて、睡眠や運動など日々の生活習慣を見直してみませんか?
【出典】