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家族信託であやしげな高額契約から資産を守りたかったご家族の相談事例

コラム

先日、ご家族の資産に関するご相談で、一人の女性がいらっしゃいました。
まだ40代で事業をされていたご主人が、脳の病気になられたとのことでした。

ご主人は現在、一般的な判断能力は保たれているものの、病気になられてからものの考え方が一変してしまったそうです。
具体的には、何百万円もするような怪しげな情報商材に次々と飛びつくようになってしまったというのです。

現時点では、ご主人が高額なサービスを購入する前に奥様へ相談があるため、何とか購入を食い止められている状況でした。
しかし、もし今後、奥様の知らないところでそのような高額な契約を結んでしまった場合、支払うことが非常に困難であるため、自宅をはじめとするご家族の資産を守りたいという切実な思いから、家族信託をご検討されていました。
奥様の深い不安は、容易に想像できるものでした。

家族信託の資産防衛機能と「詐害信託」

家族信託には、「倒産隔離機能」という資産防衛の側面があります。
一度、財産を信託してしまえば、委託者兼受益者(この場合はご主人)の債権者は、信託した財産そのものを差し押さえることはできなくなります。

その代わり、債権者はご主人が持つ「受益権」を差し押さえることが可能となります。
しかし、受益権の内容は、例えば賃貸物件であれば収益を得る権利が含まれますが、ご自宅不動産の場合、居住する権利が主となります。
このような居住権がメインの受益権を差し押さえ、競売にかけたところで、現実的に買い手がつく可能性は低いと考えられます。
実際に、私の仲間の司法書士がこれに近い相談を受けた際も、実効性がないため債権者は受益権への差し押さえまでは行わなかったという事例もございました。

タイミングの重要性

当初、ご夫婦は費用面も考慮され、まずはご家族内で「高額で怪しげなサービスを購入しない」という旨の覚書を作成することにされました。
この時点では、家族信託は見送る判断となりました。

しかし後日、奥様から再びご連絡があり、やはり家族信託をしたい、というご希望でした。
詳しくお話を伺うと、なんとご主人が実際に高額な契約を結んでしまい、その解約期日が迫っているにも関わらず、解約金がとても準備できる金額ではないため、早急に資産を防衛したいという状況に陥ってしまっていたのです。

実は、既に債権者が存在する段階(または、近い将来払えなくなる債務を抱えることがわかっている状態)で、その債務から逃れる目的で信託をすることは、「詐害信託」として無効となってしまいます。
残念ながら、この事例はまさにこの詐害信託に該当するタイミングにきてしまった可能性が高いことを、奥様にお伝えせざるを得ませんでした。

この件では、信託によって資産防衛を図ることよりも、まずはご主人が結んでしまった高額な契約そのものを何とか解決することが最優先と考えられます。
そのため、私の知っている弁護士をご紹介し、根本的な問題解決へ向けてご案内いたしました。

認知症対策としての家族信託も同様ですが、本件を通じて、つくづく家族信託は「適切なタイミング」が非常に重要であると再認識させられた事案となりました。
(ちなみに、具体的な債務がなくとも、本件のような目的での信託自体が詐害信託に該当するという学説もあるようで、実際は各事例に応じた司法判断になるでしょう。)
資産に問題が発生する前の、備えの段階で行動を起こすことが、ご家族の安心を守る鍵となります。

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