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「安く済ませたい」が命取り?家族信託で公正証書と信託口口座を作成した方がよい理由
コラム
最近、家族信託のご相談を受ける中で、立て続けに「契約書は公正証書ではなく『私署証書』にして、口座も受託者の個人口座で代用すると費用が抑えられるのか?」というご質問を受けました。
お気持ちはよくわかります。
しかし、実務の観点からみると、その「節約」は、将来、信託そのものを機能不全に陥らせる「致命的なギャンブル」です。
1.私署証書ではトラブルの原因にもなるし、「信託口口座」の入り口で拒絶される
まず、公正証書で信託契約書を作成すべき理由について。
家族信託は複雑な仕組みで、後々のトラブルにもなりやすいので、公証人という専門家の目を入れて、契約の有効性をゆるぎないものにするという効果があります。
また、「私署証書の契約書では、ほとんどの金融機関で信託口口座を作れない」という現実があります。
銀行などの金融機関にとって、家族信託は非常にリスクの高い取引です。
「本当に本人の意思か?」「後で他の親族から訴えられないか?」を極めて慎重に判断します。
そのため、公証人が作成し、本人確認と意思確認が公的に担保された「公正証書」であることを、口座開設の絶対条件としている銀行が圧倒的多数なのです。
「契約書を安く済ませようとした結果、肝心の信託専用口座が作れない」 これでは、本末転倒と言わざるを得ません。
2.「個人口座」での管理は、横領の疑いと凍結・差し押さえリスクを招く
「では、専用口座を作らずに受託者の個人口座で管理すればいいのでは?」という声も聞こえてきますが、これも危険な選択です。
分別のつかない管理: 受託者個人の生活費と信託したお金が混ざってしまうと、将来、他の親族から「親の金を使い込んだのではないか」と疑われた際、法的に身を守る術がありません。
受託者に万が一のことがあった場合の凍結: 受託者が先に亡くなった場合、その口座は「受託者の個人の遺産」とみなされ、凍結されます。本来、受益者(親御さん)のために使うべきお金が、受託者の相続人全員のハンコがないと引き出せなくなるのです。
信託口口座は、受託者が亡くなっても凍結されず、次の受託者にスムーズに引き継げる仕組みになっています。
この「継続性」こそが、家族信託の最大のメリットなのです。
受託者債権者による差し押さえ:一般的にはあまり想定されないと思いますが、受託者個人の債務について、個人口座で信託財産を管理していた場合、これが差し押さえられてしまうリスクがあります。
信託口口座であれば、倒産隔離機能があるので、このような心配はありません。
3.確実な「出口」への通行券を買う
家族信託の目的は、契約書を作ることではありません。
「いざという時に、家族が迷わず、確実に財産を動かせること」です。公正証書手数料や口座開設の手間を惜しんで、いざ認知症が進行した時に「銀行で手続きができない」「親族間で揉め事になった」となっては、それまでかけた時間も費用もすべて無駄になってしまいます。
私は、お客様に「あの時ケチらなければよかった」という後悔をさせたくありません。
だからこそ、将来のトラブルを未然に防ぎ、確実に機能す「公正証書+信託口口座」のパッケージを強くお勧めしています。