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家族信託は「特定委託者」に注意して設計しないと高額の税金が課せられる可能性があります。

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家族信託では、その設計や運用に慎重な検討が求められますが、特に「特定委託者」に関する論点は見落としがちなので注意が必要です。​
本記事では、特定委託者に関する問題点を解説し、適切な家族信託の設計方法について考察します。​

特定委託者とは?

特定委託者とは、信託契約において信託の変更権限を有し、かつ将来的に信託財産からの給付を受けることが予定されている者を指します。​
具体的には、受託者が信託契約の変更権限を持ち、かつ信託終了時の帰属権利者として指定されている場合、受託者は特定委託者に該当します。
このような設計をしてしまうと、​税法上、みなし贈与として贈与税が課される可能性があります。 ​
にも関わらず、この点を見落として、柔軟に信託変更できるように設計した信託契約書は多く見られます。

特定委託者に該当するケース

受託者に変更権限を与えているものはすぐにわかります。
少し疑問を抱くものとして、例えば、よく見るのが「受託者は、受益者の同意を得て、信託の変更ができる」「受益者と受託者の合意で信託変更できる」といったケース。
一見、受託者単体では契約変更はできない形であるため、特定委託者の制度趣旨からしても特定委託者に該当しないのではないかと思われがちですが、これでも特定委託者に該当してしまいます。

特定委託者によるみなし贈与を避けるためのポイント

特定委託者としてみなし贈与の適用を受けないためには、信託契約における信託変更権限に制限を加えることです。
​具体的には、信託契約の変更を「信託の目的に反しない場合に限り」行うことができると定めることで、信託変更権限を軽微なものとし、特定委託者に該当しないように設計します。
私が設計する際には、基本的には信託法の条文どおり、「信託の目的に反しないことが明らかな場合には」受託者と受益者の合意で、「信託の目的に反しないことが明らかで、かつ受益者の利益になることが明らかな場合には」受託者単独で、信託の変更ができる造り込みにしております。

信託変更権限に制限を加えるとデメリットがあるのでは?

信託変更権限に制限を加えることで特定委託者としての課税リスクを回避できますが、一方で信託契約の柔軟性が損なわれ、将来的な状況の変化に応じた信託契約の見直しが困難になる場合があります。​
信託契約を設計する際には、将来の状況変化を見越した柔軟性と、特定委託者としての課税リスクのバランスを考慮することが重要です。 ​
この点、これまでの私の相談経験に基づく実務的な視点から言えば、家族信託での変更ニーズは、ほとんどが「信託の目的に反しないことが明らか」と思われるものです。
よって、先述のとおりの変更権限設計にしておけば、おおよその変更ニーズには耐えられると思われます。

まとめ

家族信託における特定委託者の論点は、信託契約の設計において重要な検討事項です。​
信託変更権限と帰属権利者の設定によっては、みなし贈与として贈与税が課されるリスクが生じます。
​適切な信託契約の設計と、専門家の助言を得ることで、これらのリスクを回避し、円滑な財産管理・承継を実現することが可能です。​

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