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家族信託契約はあとから変更できる?どうやって変更する?
コラム
家族信託が普及し始めて10年程度経ちました。そろそろ状況が変わって、信託契約を変更したいというご相談も増えてきています。そこで、家族信託の変更について書いてみます。
(信託の変更については、家族信託実務ガイド第22号に「信託期間中の各種変更における実務」と題して寄稿に寄稿していますので、ご興味があればご覧ください。)
家族信託はあとから変更できます。
家族信託はあとから変更することはできます。その方法として、信託法では次のように整理されています。
①委託者、受託者及び受益者の合意
②信託の目的に反しないことが明らかであるとき:受託者及び受益者の合意
③信託の目的に反しないこと及び受益者の利益に適合することが明らかであるとき:受託者単独
④信託契約の中に定めがある場合:その定めによる
ちなみに、柔軟な変更を可能とするために、④によって受益者と受託者の合意でどんな変更もできるようにしている契約書がよくありますが、こちらは特定委託者の論点(別記事で触れます。)に該当し、高額な税金がかかるリスクがありますので要注意です。
「信託の目的に反しないことが明らかであるとき」の要件は満たす?
信託契約では、概ね冒頭の方に信託の目的条項があることと思います。家族信託の場合は、基本的には受益者の生活のサポートが目的なので、抽象的な(悪い言い方をすれば、どのようにも解釈できる)書きぶりになっていることが多いと思います。
このことから、個人的には、信託の目的に反することが明らかなこと以外はこの要件を満たすことがほとんどなのだろうと考えています。
よって、一般的な相談レベルの家族信託の変更は、上記②によって受託者と受益者の合意で可能になると思われます(といっても、家族信託は基本的に委託者と受益者が同じなので、①とほとんど変りません。)。
「受益者の利益に適合することが明らかであるとき」とは?
一方で、こちらはなかなか適合すると言い切れないケースもあります。
基本的には、信託の目的に反していなければ受益者の利益に適合することが多いとは思いますが、例えば受益者の生活の質の維持・向上のために、信託した金銭を受託者が投資にまわせるようにする変更などはいかがでしょうか?
おそらく信託の目的には反しないのでしょうが、投資は必ずリスクを伴いますので、受益者の利益に適合するとまでは言い切れないと思われます。
実際にあった微妙な事案
もともとお父さん名義の土地建物に家族で住んでいたところ、土地建物を息子さんに信託しました。その後、自宅を建て替えることになり、税金面の関係で名義を息子さんにすることになりました。
自身の負担なく建て替える自宅にはもちろんお父さんも住みますし、新たに介護面のこともを考えた造りにするため、明らかにお父さんにはメリットになるように思えます。
しかし、信託財産である土地のうえに受託者である息子さん名義の建物を建てる(土地を建築資金のローンの担保に入れるということにもなります。)ということは、受託者が自分のために信託財産を使っている形になり、利益相反になる可能性があります。
そこで、信託契約を変更して、利益相反を許容する条項を加えたいとのご相談でした。
このケースでは無事に受益者であるお父さんと受託者である息子さんの合意で契約変更できました。
しかし、例えばお父さんが認知症を発症して判断能力がなくなっていた場合はどうでしょうか?「受託者の利益に適合することが明らか」とは言えない変更ですから、息子さん単独での変更はできず、息子さん名義での建て替えはできなかったことになります(受益者代理人を選べるのであれば、受益者代理人と受託者の合意で変更できたかもしれません。)。